自益信託と他益信託、自益信託と自己信託の違い

自益信託と他益信託
信託の設定により、民法上、信託財産の所有権は受託者に移ります。が、税務上は実質的に信託財産に関わる利益を得る受益者が所有者とみなされる。即ち、委託者と受益者が同じ信託は、自分が利益を受ける信託という事で「自益信託」と呼ばれます。従って、税務上の所有者に変化がないため課税関係は生じません。
委託者と受益者が異なる信託は、他人が利益を受ける信託という事で「他益信託」と呼ばれます。この場合、信託の設定前後で税務上の所有者が変わり、且つ多くの場合は受益者から委託者に対する対価の支払いがなく信託が設定されるので、信託の効力発生時に委託者から受託者に対して贈与等があったものとみなされ、課税関係が生じます。

自己信託(信託宣言)
平成19年の信託法改正で追加されたもので、委託者自身が受託者となる信託です。この場合、公正証書を作成するなど、公正な場を利用して、信託を宣言する方法により効力を発生させるのが一般的です。
相続・事業承継上委託者からみた使い分けは、自益信託は「これまでどおり利益は欲しいが財産管理には不安がある」時、自己信託は「財産を贈与したいが、これまで通り管理・処分は自分でしたい」時と使い分けが可能です。前にご紹介した「受益権分離型信託」はその応用例で受益権が”元本”と”収益”とに複層化されているので”複層化信託”とも呼ばれています。