ハイブリッド証券

ハイブリッド証券とは?

・株式(貸本)と債券(負債)両方の性格を併せ持つハイブリッド証券のことで、値動きリスクは株式と債券の中間
・広義には劣後債や優先証券など、シニア(普通)社債以外の証券全般を指すが、一般的には「一定の基準を満たして資本性が認められた「非希薄化型の社債型証券」
・発行体の信用状況により利払いが停止(または繰り延べ)されるリスクがあり、破綻し場合には弁済順位が株式と債券の中間

ハイブリッド証券投資の性質

・債券としての性質:クーポン(利息)が予め定められ満期または繰上げ償還時に額面100%で償還
・株式としての性質:状況により、利息の支払いが繰延べられることもあり株式(資本)に近い

ハイブリッド証券の分類と定義(バーゼルⅢ規準)

  証券名 クーポン配当 金利・配当の繰延 償還期間 コール償還 備考
普通株等Tier1 普通株 設定なし 可能(非累積) なし なし  
その他Tier1 優先株CoCo(永久)債 あらかじめ設定 可能(非累積) なし あり 配当可能利益がない場合は、配当不可(支払いは非累積的)
Tier2 劣後債CoCo(期限付)債 あらかじめ設定 不可 あり なし※設定可能 劣後事由が発生しない限り利払いは義務利払い停止はデフォルト
預金・社債 普通社債
預金
あらかじめ設定 不可 あり なし※設定可能  

ハイブリッド証券が注目される背景

【調達側】
・資金調達の財務の健全性の両立
・高い資本性の確保・自己資本規制への対応
・株主価値の希薄化を回避
・節税
・調達手段の多様化
【運用側】
・投資家の要求の高度化
・高利回りの追求
・信用リスクへの対応6

ハイブリッド証券投資のリスク

【 投資リスク】
劣後特約条項など債券発行条件による条件
①劣後債元本の支払い停止
②利払・配当の停止
③繰上償還(コール)の見送り
【商品性による条件】
金融市場(信用)が不安定
⇒ 普通債に比べて、価格の下落率は大きい。
(利回りの上昇が大きい)
金融市場(信用)が安定
⇒ 普通債に比べて、価格の上昇率は大きい。
(利回りの低下が大きい)

繰上スキップ・利払い繰り延べ

市場慣行として
ハイブリッド証券の所与の権利として、「繰上げ償還(コール)をしない」・「クーポン(配当
)の繰り延べをする」ということはできるが、初回コール日に償還、利払い(配当)は停止す
ることはないという前提で市場で取引されている
⇒ 利回り表示は初回コール日を償還日とみなして算出
・繰上償還をしない(スキップ)・利払い(配当)の停止・繰り延べは、ルール上可能だが、
「掟破り」・「禁じ手」とされており、過去に事例はあるが稀にしかない
・次の資本調達をする上では大きなハンディキャップを負うことになり、国際資本市場で
の生き残りはほぼ不可能

繰上償還が多い理由は

・ 繰上償還は発行体の裁量で任意で決めることができるよう「期限前償還条項」がついているものが多
いが、満期償還日の前に繰上償還されるものがほとんど
・ 現行のBIS規制で発行額の一定割合を自己資本に繰り入れることはできるが、期限付き劣後債の場合、残存期間が5年を切ると年率20%づつ減価しなければいけないという会計上の縛りがある。
・残存5年の時点で繰上げ償還をし、再度ハイブリッド証券で資金調達をするのが一般的
[これまでに繰上償還が見送られたのは、財務内容が大幅に悪化した場合や市場が混乱状態にあるときなどに限られており、事例は極めて少ない。]

どんな企業が発行するのか

・普通社債は自己資本に算入されないが、ハイブリッド証券は株式としての性質もある
ため、一定の条件下で自己資本として算入することが可能
・バーゼルⅢで自己資本の質と量の向上を求められているため、世界的な金融機関が
主に発行

G-SIFIsとは

・G-SIFIs(Global Systemically Important Financial Institutions)は、世界を代表する金融機
関であり、毎年1回見直される。2015年10月時点ではG-SIFIsに指定された金融機関は30行
・いわゆる「大きくて潰せない銀行機関」

G-SIFIsに指定されていない金融機関

・G-SIFIsに指定されてはいないが、国際的な金融活動を展開する金融機関もハイブリッド証券を発行
○金融機関例
・ブラジル銀行(Banco do Brazil SA) :ブラジル
・ダンスケ銀行(Danske Bank A/S):デンマーク
・ロイズ銀行(Lloyds Bank plc):イギリス
・インテサ・サンパオロ(Intesa Sanpaolo):イタリア
・ラボ・バンク(Rabobank):オランダ
・KBC銀行(KBC Bank NV):ベルギー
・マッコーリー銀行(Macquarie Bank Ltd):オーストラリア
・ANZ銀行グループ
(Australia & New Zealand Banking Group Ltd) :オーストラリア
・ウェストパック銀行
(Westpac Banking Corporation Ltd):オーストラリア)

金融機関が自己資本比率を高める背景

・国際業務を展開する銀行に対してバーゼル銀行監督委員会が自己資本規制を策定。
但し、バーゼル規制はガイドラインで、実際の法の施行は各国で法律を制定するなど
「落とし込み」が必要
・日本:金融庁告示・監督指針・Q&A
・アメリカ:ドット・フランク法
・欧州:CRDⅣ(Capital Requirement Directives

バーゼルⅠ(1992年12月~):国際業務を展開する銀行の健全性を維持するために自己資本の最低所要水準を8%に制定
バーゼルⅡ(2007年~ ):アジア通貨危機・ロシア危機などを経て、信用リスクやオペレーショナルリスクなど新たなリスクに対する規制の枠組みを制定
バーゼルⅢ(2013年~):リーマン・ショックを経て銀行と銀行システム全般の健全性を強固するため、自己資本の量と質の向上を目指す

バーゼルⅠ⇒Ⅱ⇒Ⅲ(自己資本比率規制)

・経営の健全性を確保するために、銀行は自己資本に率を一定以上に保つ義務が課せられている
・バゼールⅢの特徴は、資本の質と量の強化
・2013年から適用開始し、2019年までに完全実施
・バゼールⅢ非適応証券(従来型の劣後債・優先証券)の自己資本への算入が原則認められなくなる
○バーゼルⅡの下での資本構成
Tier1のうち主要部分
・ 普通株
・普通株転換権付優先株
・内部留保
上記以外のTier1
・上記以外の優先株
・優先出資証券
Tier2
・劣後債、劣後ローン
・土地再評価差額金の45%相当額
・その他有価証券評価差額金の45%相当額
・一般貸倒引当金(リスク・アセットの1.25%まで)
○バーゼルⅢの下での資本構成
普通株等Tier1
・普通株
・内部留保(その他包括利益を含む)
その他Tier1
・優先株
・その他の商品は、高い損失吸収力を持つものに限定(条件を明確化)
Tier2
・一部の優先出資証券、劣後債、劣後ローン(銀行の破綻時に、預金者や一般債権者に劣後して損失を吸収することが明確なものに限定。ステップアップ金利の付いた商品は算入不可。)
・一般貸倒引当金

 

バーゼルⅢ資本算入の条件

バーゼルⅢは、実質破綻時における資本に対するルールを定めており、資本に算入する証
券にも、予防的なルールを要求している
[実質的破綻時における資本の適格要件]
その他Tier1、Tier2 資本の適格要件について、公的セクターによる資本注入等の支援が無
ければ銀行が存続不可能と関係当局が判断した実質的な破綻時に、元本削減もしくは普通
株に転換する等のトリガー条項を付与することが義務付けられている
○実質的破綻とは
金融当局から元本の削減または公的機関からの資金援助がなければ存続できない
と認定されること

バーゼルⅢの全体像

・資本基準の引き上げ:普通株等Tier1比率、Tier1比率の最低水準の引き上げ
・資本の質の向上:①普通株等Tier1に調整項目を適用②Tier1、Tier2適格用件の厳格化
・定量的な流動性規制(最低基準)を導入
①流動性カバレッジ比率(ストレス時の預金流出等への対応力を強化)
②安定調達比率(長期の運用資産に対応する長期・安定的な調達手段を確保)
リスク捕捉の強化:カウンターパーティー・リスクの資本賦課計測方法の見直し
・プロシクリカリティの緩和資本流出抑制策(資本バッファー<最低比率を上回る部分>の目標水準に達するまで配当・自社株買い・役員報酬等を抑制)など)
・システム上重要な銀行への追加措置:システム上重要な金融機関によってもたらされる外部性を減少させるような追加資本を賦課エクスポージャー積み上がりの抑制

CoCo債の登場

予防的破綻リスクを数値化した債券(条件的ハイブリッド証券)
・Contingent Convertible Securities の略で、邦訳すると「偶発転換社債」
・バーゼルⅢ規制に対応した債券
・劣後債・優先証券に偶発条件に関する条項(トリガー条項)が実質的に付されている。
・国際的に活動する金融機関の発行が中心
・発行体の自己資本比率が一定水準を下回った場合、または発行体が実質的に破綻状
態にあると認定された場合⇒ 元本削減、または普通株へ転換
・株式の希薄化を防ぎつつ、自己資本比率を引き上げることが可能

CoCo債→[利息の支払]
↓トリガー(あらかじめ定められた条件に接触した場合)
→[強制的に発行体の株式に転換]
→[強制的に元本の一部、または全部が削減」
※CoCo債は各証券ごとにトリガー条項が違うため、従来以上の専門性が求められる
※CoCo債を含めたハイブリッド証券は、投資信託に組み込まれている場合も多

CoCo債の特徴

[収益性]
CoCo債特有のリターン*CoCo債の特有のリスクを取る代わりに、高いクーポンを享受
[安全性]
金融規制改革のタイミング*現在、新たな金融規制(バーゼルⅢ)への対応が世界的に進められており、資本強化によってCoCo債の安全性が上昇今後の市場拡大
[流動性]
今後の市場拡大*劣後債、優先出資証券からCoCo債へ発行のイン
センティブが移ることによる市場拡大や、自己資本
比率を高めるために保険会社の発行増加の予想

CoCo債で株式転換、元本削減は起こるか?

→可能性は極めて低い
●バーゼルⅢによる安全性の強化
バーゼルⅢによる自己資本比率の増強は段階的に行われる。
発行されて時間が経つごとにトリガーポイントに抵触する可能性は低くなる

●G-SIFIs、G-SIIsによる自己資本の強化の必要
主要な銀行、保険会社はそれぞれG-SIFIs、G-SIIsに選定され、上記バーゼルⅢの自己資本比
率目標にさらに上乗せが要求される。CoCo債の安全性がさらに高まる

バーゼルⅢによる自己資本比率の段階的強化。
2019年にG-SIFIsで区分4に選定されている銀行なら、9.5%が要求される

※G-SIIsについては区分、「上乗せ分」の設定は今後決定

CoCo債投資家

・総発行額の約50%を個人(富裕層)が保有

※機関投資家はCoCo債の投資に積極的ではない
・格付が低いため。
シニア債から5ノッチ程度、格付が下がるため非投資適格水準となる。
・劣後の構造上の問題で格付がないものも多いため。
・Tier1適格であるためには、利払が発行体の完全な裁量で決まるという条項が盛り込まれる
ことが必要

しかし
・世界的に低金利が続く中、投資家の利回り追求が続く
・資本増強を企てる金融機関の強い発行意欲
発行者と投資家の利害が一致し、市場の拡大が継続

CoCo債の特徴①

■特徴
・自己資本比率が一定水準(5.125%もしくは7.000%が一般的)を下回ると、元本削減
または株式に転換される
・各種規制強化を行い、自己資本比率が上昇するなか、この「転換」リスクが投資判断
の鍵となる。現在の市場は、CoCo債の転換リスクに極めて大きなプレミアムを要求

<同一発行体による利回り差>

種類 銘柄 償還日 初回コール日 格付(S&P) 参考利回り
シニア債(上位無担保債) BACR 2.875 2020/6/8 2020/6/8 BBB 2.64%
期限付き劣後債 BACR 10.179 2021/6/12 2021/6/12 BBB-  3.99%
優先証券(永久劣後債) BACR 7.434 –  2017/12/15  BB  2.69%
期限付き劣後債(CoCo債) BACR 7.625 2022/11/21  2022/11/21  –  BB+ 4.96% 
永久劣後債(CoCo債) BACR 6.625  –   2019/9/15 B+  6.44%

<2015年11月17日現在>

CoCo債の特徴②

自己資本比率水準によるリスク図

  当局が介入
配当・利払いが制限
 
←ーー12%ーーー ーーー8.0~10.0%ーーー ーーー5.125 or 7.00%ーーー
現在問題なし 「クーポン繰り延べ」
・旧型永久劣後債
・永久劣後債(CoCo)
「株式転換または元本削減」
・期限付き劣後債(CoCo)
・永久劣後債(CoCo)

 

※現時点で経営危機に陥った場合・・・
・ハイブリッド証券の種類に関係なく、一律に投資家に負担を強いる可能性が大きい
・G-SIFIsに指定されている大きな金融機関であれば、
破綻(トリガー抵触)前に当局による介入で処理対応される可能性が大きい

ハイブリッド証券の現状

ハイブリッド債の市場動向
・リーマンショック以降、世界の主要国中央銀行は積極的な金融緩和を実施
・その結果、世界的に金利が低下。利回りを追及する投資家は
①低格付けの普通債、または②高格付けのハイブリッド債にシフト
・本邦機関投資家による日系企業債への投資が積極的に行われ、割高傾向はあるものの、低成
長と当面の金融緩和策が継続されることから、債券への投資、特に劣後債などの高利回りを追
及した債券への投資が継続される
・2013年以降バーゼルⅢ資本規制対応で、金融機関の自己資本比率が段階的に引き上げられる
ため、発行が継続的に増加
・バーゼルⅢ以前に従来の規制に基づき発行されたもので、新規制では自己資本に算入されない
ものあるため、新規制に見合う証券に借り換え重要も発生

普通社債・ハイブリッド証券の格付け比較

発行体ごとに格付けは様々。ハイブリッド証券は弁済順位が普通社債と比べ低位であることが一般的
2015年10月30日現在

発行体 クラス Moody’s  S&P  Fitch  R&I  JCR
日本生命 普通社債 A1  A+ AA AA
劣後 A3  A-  A-
第一生命 普通社債 A1 A+ A A+ A+
劣後 A3 A-  A A+ A+
三井住友海上 普通社債 A1 A+ A AA- AA+
劣後 A3 A-  A-
三菱UFJ 普通社債 A1 A+ A AA- AA
劣後 A2 –  A-
みずほ銀行 普通社債 A1 A A- AA- AA
劣後 A2
日本国債 普通債券 A1  A+ AA+  AAA

バーゼルⅢでハイブリッド証券はどうなる

金融機関の財務体質の強化
バーゼルⅢなどを背景として規制強化が進むなか、自己資本比率が上昇
また自己資本規制以外のレバレッジ規制等により財務体質が強化
バーゼルⅡからⅢへの移行期における各種ハイブリッド証券の混在
異なる世代のハイブリッド証券が混在することで、個別証券の評価が複雑化
バーゼルⅢへの2019年の完全移行までの間、市場のゆがみによる投資機会の存在

  優先債券
(バーゼルⅡ)
期限付き劣後CoCo債
(バーゼルⅢ)
永久劣後CoCo債
(バーゼルⅢ)
償還延長リスク あり なし あり
利払い繰り延べリスク あり なし あり
転換リスク なし あり あり
供給 なし 限定 拡大

米国での「その他Tier 1資本」証券

米国で「その他Tier 1 資本」の要件として、
「株式(含:優先株・優先出資証券)であること」が定められている。
また、「その他Tier 1 」適格の証券は祖税法上、負債として扱われない。
このため米国金融機関による「CoCo債」の発行事例はない。
「その他Tier 1 資本」の調達方法として、「優先株預託証券」を発行。
各発行体は、発行できる優先株式の株数に上限があるため、大口額面の優先株
を発行し、預託機関に預託し小口化し、預託証券の形で発行。
個人・機関投資家ともに投資家となっている。$25と少額の券面の銘柄もあり、個
人投資家が普通株同様に取引ができるため、個人の投資家の保有も多い。

自己資本比率比較(2014年12月31日時点)

発行体 CET1
(普通株式等) 
Tier1
(Tier1合計) 
自己資本比率 Basel III +
G-SIFIs上乗せ
バーゼルIII
(最低基準)
4.50%  8.50% 10.50% 
HSBC 10.90%  12.50%  15.60%  13.00%
三菱UFJ 11.25%  12.45% 15.53%  12.50%
バークレイズ 10.20%  13.00%  16.50%  12.50%
JP モルガン 10.20%  11.60%  13.10%  13.00%
BNPパリバ 10.50%  11.50%  12.60%  12.50%
ドイツ銀行 9.70%  16.90%  18.50%  13.00%

                                                                                                      出所:Bloomberg

ハイブリッド証券関連用語集①

普通株式等
Tier1
バーゼルⅢ規制での自己資本項目
Core Equity Tier 1(CET1) 基本的項目。事業継続ベース(Going Concern)の自己資本
普通株式・内部留保など最も損失吸収力の高い資本
その他
Tier 1
バーゼルⅢ規制の自己資本項目
Additional Tier 1(AT1) 補完的項目。破綻時を想定したベース(GoneConcern)の自己資本
優先株式・優先出資証券(条件による)等
Tier2 バーゼルⅢ規制の自己資本項目
劣後債・劣後ローン等及び一般貸出引当金
Tier3 準補完的項目。バーゼルⅢでは廃止
実質破綻状態
(PON)
Point of non-viability
関係当局が発行体につき実質破綻状態にあると判断した時点
PON条項 実質破綻時損失吸収条項。
発行体が実質破綻状態に陥った場合に元本削減等が行われる旨を定めた条項

ハイブリッド証券関連用語集②

SIFIs 「Systemically Important Financial Institutions」規模、事業の複雑性、相互関連性の多さなどから判断して、破綻した場合に金融システムに多大な影響を与えるであろう金融機関。”Too big to fail”の対象となり得る金融機関。金融安定理事会(FSB)が認定。FSBには国際通貨基金(IMF)も参加しており「最後の貸し手」機能を持つIMFが「潰せない」と考えているということがポイントである
SIBs 「Systemically Important Financial Institutions」に該当する銀行。
SIBsには「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs: Systemically Important Banks)」と国内のシステム上重要な銀行(D-SIBs: Domestic Important Banks)」の2つに分けられる
CoCo債 「Contingent Convertible Bonds」の略で、邦訳すると「偶発転換社債」。バーゼルⅢ規制に対応した債券
Bail -In 破綻危機時の救済方法
破綻危機にある経済主体(金融機関)に対して債権者が債務の削減・減免などの負担することで救済
Bail – Out 破綻危機時の救済方法
破綻危機にある経済主体(金融機関)に対して公的支援などの緊急援助により救済
バーゼルⅢ 主要国の金融監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会が2010年9月に、国際的な業務展開する銀行の
健全性を維持するための新しい自己資本規制。1988年の「BIS規制(バーゼルⅠ)」、2004年の「新BIS規制(バ
ーゼルⅡ)」に次ぐ、新たな規制(枠組み)

ハイブリッド証券関連用語集③

ハイブリッド証券 資本と負債の両方の特徴を併せ持つ証券。劣後債、永久債、優先出資証券、優先株など
繰上償還 繰上償還(コール)条項が付されているものがある。通常は、初回コール日に繰上償還され、繰上償還が行われない事例は稀である。発行体の財務状況の著しい悪化や、市場金利の大幅な上昇した場合など
は繰上償還されないこともある
劣後特約 破産・会社更生・民事再生など劣後自由が発生した場合、他の債権の返済に劣後して(他の返済が終わってから)返済を受けること
国際決済銀行 Bank for International Settlement, 略称:BIS. 各国の中央銀行を株主とする国際的な組織。1930年に大一時世界大戦で敗戦したドイツの賠償金支払いを取り扱う期間として設立。現在は、中央銀行間の決済
をする機関としての役割と、中央銀行間協力の場として機能している
ステップアップ金利 金利(または配当)があらかじめ定めた期間が経過した後に上乗せされること。初回コール(繰上償還時)に繰上償還されなかった場合に、上乗せする特約がつけられる場合が多い。バーゼルⅢではこの特約がついていると自己資本への参入が認められない
バーゼル銀行監督
委員会
1975年にG10の中央銀行総裁会議の合意に基づきバーゼル(スイスに、各国の銀行監督に関する国際協調を目的に設立。国際決済銀行(BIS)に事務局をおく。現在は20数カ国に参加国が増加。
BISとは別組織30

ハイブリッド証券関連用語集④

資本保全
バッファー
ストレス時に取り崩し可能なバッファー。最低所要水準(普通株式等Tier1 比率4.5%、Tier1比率6.0%、自己資本比率8.0%)に上乗せして普通株式等Tier1で2.5%の積み上げが求められる
カウンターシクリカル
資本バッファー
好況時に将来発生しうる巨額損失に対処するためのバッファー。資本保全バッファーの拡張として備えるもので、「普通株式等Tier1」または「その他のTier1」に区分される資本で充当する必要がある。
G-SIBs
サーチャージ
G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)に指定されると、その破綻がもたらす金融システムへの影響力を考慮し、普通株式等Tier1の上乗せが求められる
優先株預託証券 バーゼルⅢでは「その他Tier1」に区分。主に米銀が発行。優先株の発行株数に上限があり、その上限を超える場合は株主の承認が必要となる。そのため優先株を発行後、預託機関(デポジタリー)に預託し小口化したもの
金融安定理事会 Financial Stability Board.
G20諸国を中心とした中央銀行・金融監督当局・財務省やIMF(国際通貨基金)・世界銀行などの国際機関で構成。規制や監視を通じて金融システムの脆弱性への対応や金融システムの安定を担う
B3T2 バーゼルⅢ対応のTier 2債券。発行体が法的破綻に至っていなくとも、監督当局により実質的に破綻していると認定された場合に、元本削減や株式転換が行なわれる期限付き劣後債

ハイブリッド証券関連用語集⑤

 

弁済順位 発行体が経営破たん等に陥った場合に、債権者に対して残余財産を弁済する順位
初回コール利回り 初回コール日に繰り上げ償還されるものとして利回りを算出。繰り上げ償還されなかった場合は異なった利回りとなる
バーゼルⅢの
段階適用
2013年から適用を開始し、2019年初から完全適用。バーゼルⅢ非対応証券の自己資本への算入が認められる比率は2022年でゼロになる
流動性カバレッジ比率 Liquidity Coverage Ratio
金融危機の際、多くの銀行が資金繰りに困難が生じた反省に基づき、30日間のストレス下での資金流出に対応できるよう、ある一定の質の高い流動資産を保有することを求めたもの
レバレッジ比率 Leverage Ratio
自己資本比率を補完する項目。エクスポージャーに対してTier2自己資本を一定比率以上に維持することが求められている。エクスポージャー(リスクウェイトを乗じない)のオン・オフバランス資産の単純合計
安定調達比率 NSFR:Net Stable Funding Ratio
売却困難な資産を持つ場合、これに対応し十分な中長期で安定的な調達(資本・負債)をすることを求められる。(2018年1月より実施見込み)

 

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