保険料・保険金等の税務処理

保険は加入した時と受け取った時に税金の処理の仕方が異なることがあるので加入時に十分考慮する必要がある。

生命保険に加入した場合のメリットには、税の負担が軽減されることや相続税対策もありますが、やはり本来の目的は、貯蓄ではカバーできない万が一の保障があることです。中には、貯蓄性がある保険(終身保険や養老保険、学資保険個人年金保険)もあるため、保障だけでなく、貯蓄もメリットになります。一方、貯蓄性がある保険をすぐに解約すると支払った保険料より戻ってくるお金が少なくなる点はデメリットとなります。

メリット
万が一の保障ができる
所得税・住民税の負担が軽減される
相続税の対策ができる
所得税がかかる保険金では、
利息分が50万円までは非課税
デメリット
インフレのリスクがある
保険料を支払う必要がある
貯蓄型の生命保険で、
すぐに解約すると戻り率は少ない

所得税と住民税の負担が軽減される

これは、「生命保険料控除制度(せいめいほけんりょう・こうじょせいど)」と呼ばれ、1年間の払い込み保険料の一定額を所得税と住民税の対象となる所得から控除できる制度があります。つまり、生命保険の加入者は、一定額まで所得税と住民税の負担が軽減されるということです。年末調整の時期になると保険会社から控除証明書が送られてきます。

生命保険料控除を利用すると課税所得が減るため、結果的に所得税と住民税が減る事になります

生命保険料控除制度は、2012年(平成24年)1月1日に改正されて、旧制度と新制度に別けれられます(表4-1)。ご自身の契約日が、どちらの制度に当てはまるのかによって最大の控除額が決まります。旧制度では、最大控除は5万円+5万円=合計10万円(所得税)でしたが、新制度では4万円+4万円+4万円=合計12万円(所得税)に拡大されています。

(表4-1)生命保険料控除の最大控除額

制度 保険料控除の種類 対象となる保険 最大控除額
所得税 住民税
旧制度
(~2011/12/31)
一般生命保険料控除 生命保険・学資保険 5万円 35千円
医療保険
介護保険
個人年金保険料控除 個人年金保険 5万円 35千円
新制度
(2012/1/1~)
一般生命保険料控除 生命保険・学資保険 4万円 28千円
介護医療保険料控除 医療保険 4万円 28千円
介護保険
個人年金保険料控除 個人年金保険 4万円 28千円

なお、身体の傷害のみを原因として支払われる特約(傷害特約、災害割増特約)などにかかる保険料は生命保険料控除の対象外となります。

※2017年12月時点の税制にもとづき記載しており、今後変更される可能性があります。実際の税務については、お近くの税務署などにご相談ください。

相続税の対策ができる

まず、死亡保険金は、契約者(保険料負担者)および受取人が誰なのかによって、「相続税」、「所得税」、「贈与税」のいずれかの課税の対象になります(表4-2)。ただし、それぞれに非課税限度額や控除額があるため、一定額を超えた場合にのみ税金がかかります。

(表4-2)死亡保険金の税金

ケース 契約者 被保険者 受取人 税金 説明
契約者=被保険者
の場合
A夫(死亡) A夫(死亡) B妻 相続税 相続税の課税額=(受け取った保険金)-{(生命保険の非課税限度額)+(相続税の基礎控除額)}
ただし、受取人が配偶者の場合は上記に1億6千万円の税額軽減特例が加算されます。
契約者=受取人
の場合
A夫 B妻(死亡) A夫 所得税 死亡保険金を一括で受け取る場合は一時所得、年金形式で受け取る場合は雑所得として課税されます。
一時所得の課税額={(受け取った保険金)-(支払った保険料総額)-(特別控除50万円)}÷2
すべて違う人
の場合
A夫 B妻(死亡) C子 贈与税 契約者が生きているため生前贈与になります。生前贈与は年間110万円の基礎控除があります。
贈与の課税額= (年間贈与額)-(基礎控除110万円

保険用語の解説

用語 読み方 解説
契約者 けいやくしゃ

保険の場合は、契約の当事者として保険会社に対し保険料を支払う義務がある人のこと。

※用語解説は一般的な説明であり、保険会社よっては解釈や呼名が異なる場合があります。

保険用語の解説

用語 読み方 解説
被保険者 ひほけんしゃ

保険の対象となる人のこと。死亡保険では、被保険者が亡くなった場合に保険金が支払われる。

※用語解説は一般的な説明であり、保険会社よっては解釈や呼名が異なる場合があります。

保険用語の解説

用語 読み方 解説
受取人 うけとりにん

保険金を受け取れる人のこと。

※用語解説は一般的な説明であり、保険会社よっては解釈や呼名が異なる場合があります。

相続税には、基礎控除があるので、「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」の金額が控除されます。しかし、不動産などの相続資産が控除額を超える場合は、相続税がかかるケースがあります。そこで、死亡保険金を受け取る場合に限り、「500万円 X 法定相続人の人数」が非課税金額となる制度を利用して、非課税額を増やしたり、分割できない不動産資産の相続税を保険金で支払うための対策を行う事ができます。

(図4-1)相続税の控除額・非課税額

生命保険の非課税限度額 = 500万円 X 法定相続人の人数。相続税の基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数。

所得税がかかる保険金では、利息分が50万円までは課税されない

生命保険の満期金や解約返戻金(かいやくへんれいきん)は、契約者と受取人が同一人物の場合、所得税の課税対象になります(表4-3)。保険金を一括で受け取る場合は一時所得、年金形式で受け取る場合は雑所得として課税されます。一時所得の課税額は、受け取った保険金と支払った保険料の差額から、50万円を差し引いて半分にした金額です。つまり、以下のメリットがあります。

  • ・保険金と払込保険料の差益が、50万円を超えるまでは課税されません。
  • ・保険金と払込保険料の差益が、50万円を超えても課税所得を半分にする効果があります。

保険金の一時所得=(受け取った保険金総額-支払った保険料総額-特別控除50万円)÷2

なお、契約者と受取人が別の場合は、贈与税の課税対象となり、基礎控除は年間110万円となります(表4-3)。

(表4-3)満期金、解約返戻金の税金

ケース 契約者 被保険者 受取人 税金 説明
契約者=被保険者
の場合
A夫 誰でも A夫 所得税 一時所得の課税額= {(受け取った保険金)-(支払った保険料総額)-(特別控除50万円)}÷2
ただし、保険期間が5年以下(5年以下の解約含む)の一時払いの貯蓄型保険の差益は、20%(所得税15%+住民税5%)の源泉分離課税(保険金から差し引き)となります。
契約者≠受取人
の場合
A夫 誰でも A以外
妻子
贈与税 契約者が生きているため生前贈与になります。生前贈与は年間110万円の基礎控除があります。
贈与の課税額= (年間贈与額)-(基礎控除110万円)

 

保険金等の税務処理(保険金等を個人が受け取る場合)

① 保険金を個人が受け取る場合
火災保険の損害保険金や傷害保険の入院保険金、通院保険金など、個人に支払われる損害保険
契約の保険金は、いわゆる損害てん補の性格を有することから非課税となります。
ただし、傷害保険や自動車保険(搭乗者傷害保険)における死亡保険金は、相続人等が保険金
を受け取ると、金銭的に利得が生じることから課税の対象となります。この場合、保険契約者・
被保険者・保険金受取人の関係により、次のとおり課税方法が異なります。

保険契約者
(保険料負担者)
被保険者 死亡保険金受取人 課税される税金

(Aの相続人)
相続税(注1)
   
(Aの相続人以外)
相続税

(保険契約者以外)
所得税(一時所得)(注2)および個人住民税

(保険契約者以外)

(保険契約者および被保険者以外)
贈与税

(注1)死亡保険金受取人が法定相続人である場合、「500万円×法定相続人の数」の額が非課税限度額となり、
死亡保険金の金額がその範囲内であれば非課税となります。
(注2)所得税には、復興特別所得税を含みます。

② 損害賠償金を個人が受け取る場合
交通事故等で被害者となった個人が、加害者から受け取った損害賠償金(自動車保険の対人賠
償保険金など)も、保険金と同様に非課税となります。また、被害者が死亡して、相続人が受け
取る損害賠償金も非課税となります。

③ 満期返れい金または契約者配当金を個人が受け取る場合
積立型保険契約において、保険契約者が保険期間満了時に受け取る満期返れい金および契約者
配当金は一時所得として扱われ、原則として、他の所得と合算して総合課税されます。
ただし、一時所得として50万円の特別控除額が認められますので、保険金額がかなり高額な契
約でない限り、課税の対象とはなりません。
(注)所得税法上の一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、かつ、労
務その他の役務または資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいいます。